ロシアに肩入れする日本人が、なんとなく増えているように見える。

もちろん「日本人の大半がロシア支持」という話ではない。身の回りでそんな人を見たことがない、という人のほうが多いだろうし、世論調査を見てもロシアに親しみを感じる人はごく少数だと思う。ここで言いたいのは、ネットや一部の言論空間で、ロシア側の主張を妙に好意的に紹介したり、ウクライナや西側のほうを執拗に批判したりする人たちのことだ。

開戦直後からしばらくは、「NATOがロシアを追い詰めた」「ウクライナは西側の代理戦争をさせられている」「ロシアにも言い分がある」といった話をよく見た。もちろん、国際政治を単純な善悪だけで語れないというのは分かる。アメリカやNATOの行動に問題がないとも思っていないし、ウクライナ政府の政策を何でも肯定すべきだとも思わない。

ただ、相手にも事情があるという話から、だから侵略されても仕方ない、ロシアのほうが本当は正しい、という結論へ滑っていくのは別の話ではないか。武力で国境を変えることを批判するのに、まず大義名分の有無を吟味しないといけない、という態度にも違和感がある。大義があれば侵略してよいわけではないし、どの国にも自分を正当化する説明くらいは用意できる。

なぜ、そういう人たちはロシアに惹かれるのだろう。

一つは反米、反西側だと思う。アメリカが嫌いだから、その敵であるロシアを相対的に持ち上げる。「敵の敵は味方」というだけで、ロシアの政治や社会を本当に評価しているわけではない。左派の反米感情から来る場合もあれば、右派の反グローバリズムや反リベラル感情から来る場合もある。立場は正反対に見えても、反西側という一点で同じ場所に集まってしまう。

もう一つは、強いリーダーや権威主義への憧れだと思う。民主主義は話し合いばかりで遅いし、責任の所在もぼやける。そこに閉塞感を覚えて、「有能な親分が全部決めてくれればいい」と思う。プーチンの筋肉や軍人らしさ、強硬な物言いを格好いいと感じる人がいるのも、たぶんこの延長だ。自分がその親分に気に入られる側、贔屓される側にいるつもりなのだろう。

でも、権威主義のもとで自分が権力者に近い側にいられる保証はない。気に入られなければ排除されるし、少数派になれば自由に反論することも難しい。強い国家に守ってほしいと思う人は多くても、その国家が自分を守る対象から外したときのことは考えない。

単なる逆張りや陰謀論もある。世間で正しいとされている論調に反対すること自体が目的になっていて、反ワクチンや反移民など別の話題と一緒に、ロシア擁護がセットになっている。自分だけがマスコミに騙されていない、隠された真実を知っている、という万能感もありそうだ。実際には、ロシア側の宣伝をそのまま受け取っているだけなのに。

もちろん、ロシアに利害関係がある人や、昔のソ連への郷愁を持つ世代、ロシア文化への親しみから複雑な見方をする人もいるだろう。日本の安全保障を考えれば、ロシアの崩壊や中国との関係まで含めて、単純に「悪い国だから消えてしまえ」と言えない事情もある。戦争を早く終わらせてほしい、という気持ちも理解できる。

それでも、ロシアに肩入れすることと、現実的な外交や停戦を望むことは同じではない。ウクライナが自由や正義という抽象的な理念だけのために戦っているわけではなく、占領された後に何が起きるかを知っているから戦っている、という点も忘れたくない。

結局、ロシアそのものが好きというより、反米、強い指導者、勝ち馬に乗りたい気持ち、逆張り、陰謀論、そして「力のある者に従えば自分は安全」という心理が混ざっているのだと思う。そういう感情が存在すること自体は否定しない。ただ、それを「日本人は権威主義を好む」と大きく一般化するのも、ロシア側の物語を鵜呑みにするのと同じくらい危うい。