おっさんを主人公にしたファンタジーが増えるのは、別に悪いことではない。若い主人公が努力と才能で世界をひっくり返す話とは違う、年齢なりの諦めや経験を持った人間が見られるかもしれない、と少し期待してしまう。
だから「片田舎の剣聖」も、剣一本で長く生きてきた男が、派手には語られない失敗や後悔を抱えながら、若い連中を見守る話なのかなと思った。自分が前に出るより弟子を立てるとか、勝てるからこそ剣を抜かないとか、そういう渋さがあるのかと。
実際には、本人は控えめなのに周囲だけがやたら持ち上げ、若い女の弟子たちが集まり、結果として「本当はすごいおじさん」がちやほやされる話に見えてしまった。主人公が露骨に喜んでいないぶん、なおさら作劇の都合が目につく。
おっさん主人公に求めたいのは、若者の願望を年齢だけ変えて載せ替えたものではない。強さがあってもいいし、モテてもいいけれど、積み重ねた時間の重さや、もう取り返せないものへの態度が読みたい。悟り切った仙人でなくていい。ただ、若い主人公では出せない景色を見せてほしい。
これは作品が悪いというより、自分が勝手に別のものを期待しただけなのだろう。剣のアクションや、知られざる実力者が世に出る快感を楽しむ作品としては、支持される理由も分かる。でも「おっさん」と看板に掲げるなら、たまにはおっさんであること自体が物語になる作品も増えてほしい。