私は最初、敵の製油所や発電所を叩いたという話を見て、「それで戦争に勝てるわけではないだろ」と思った。実際、ウクライナは長いあいだミサイルやドローンで電力や交通を狙われてきたのに、国家としては崩れなかった。むしろ侵略された側の人たちは、壊された生活を守るために踏ん張る理由を強く持つ。
ただ、これはインフラ攻撃が無意味だという話でもないのだろう。前線へ燃料、弾薬、部品、食料を運ぶ線を細らせれば、攻める側は兵を動かし続けにくくなる。橋や鉄道だけでなく、精製設備や空港、通信網への損害も、すぐに決着を生まなくても選択肢を減らす。後方を守るための人員や防空も必要になる。
それに、同じ停電やガソリン不足でも、防衛している国と外へ攻めに行っている国では受け止め方が違う。故郷を守る戦争なら不便に耐えることが目的そのものに結びつく。反対に、遠い戦場で何を得ているのか曖昧なまま、自分の暮らしまで悪くなれば、「なぜ続けるのか」という不満は出る。独裁的な体制なら世論だけで即座に止まるわけではないが、政権にとって無視できる負担でもないはずだ。
ウクライナ側の勝利条件は、必ずしも相手の首都に旗を立てることではない。占領を固定させず、撤退を選ばせ、少なくとも侵略の成果を与えないことが大きい。一方でロシア側は、何かを持ち帰れなければ始めた戦争を正当化しにくい。この非対称性を抜きに、互いにインフラを壊しているから同じだ、と言ってもあまり意味がない。
もちろん西側からの支援があるから耐えられる、という面は大きい。電力設備も資金も弾薬も、国内だけで回しているわけではない。だから相手にも別の支援者がいれば、損害がそのまま敗北になるとは限らない。それでも支援を受けるほど条件が悪くなり、資源を安く売り、輸送の穴を埋め続けるなら、戦争の値段は上がる。
結局、インフラを壊せば勝つ、でも壊しても勝てない、のどちらか一方ではないのだと思う。勝敗を決める魔法ではないが、兵站を鈍らせ、経済を削り、守るべき場所を増やし、継戦の意思を試す手段にはなる。最後に占領地から出ていく判断をさせるまでの、長く嫌な圧力として見るべきなんだろう。ドローンでそれが以前より安く、遠くまで届く時代になったこと自体が、いちばん嫌な話かもしれない。