日本三大誤解を招く見出しといえば、やっぱり「ノーバン始球式」「アフガン航空相撲」「暴力二男」あたりがまず思い浮かぶ。というか、ノーバン始球式はもう殿堂入りでいいと思う。
初めて見たときは「ノーパン」の誤植かと思うのに、実際にはノーバウンド。始球式で投げた球がワンバウンドしなかった、というだけの話だ。わかっていても、見出しだけ見ると毎回一瞬だけ別の意味が頭をよぎる。コメント欄でも定番すぎて、みんなが書きたがる一方、あまりにも定番なので注目コメントには載せないという謎の配慮まで発生している。
「アフガン航空相撲」も、文字列のインパクトがすごい。アフガニスタンの航空会社か、航空相撲という新競技かと思わせておいて、実際には固有名詞や誤読が組み合わさったものだったりする。「アフガン航空相撲殺される」まで行くと、もうニュースとして成立しているのかどうかもわからない。
「暴力二男」も有名だ。暴力的な次男なのか、暴力二男という謎の肩書なのか。漢字の区切り方を変えるだけで、見出しの世界が急におかしくなる。
ほかにも「米国ではしか流行」は、アメリカで麻疹が流行している話なのに、米国では鹿が流行しているように読める。「事故の影響により米原発はすべて運転見合わせ」も、米原発がアメリカの原子力発電所なのか、米原にある発電所なのかで意味が変わる。米原、米子、米朝あたりは、漢字を見た瞬間に国名と地名と芸名が入り乱れる。
地名や企業名では「武豊火力発電所」「東ソープラント」「東ソープラント爆発事故」も、知らない人が読むと人名や別の単語に見える。「美人局アナ」も、美人な局アナの話なのか、つつもたせの局アナなのかで大違いだし、「精子会社」は会社の子会社の名前だとわかっていても、見出しにすると強い。
「学生ら致される」「土井委員長少年襲う」も、助詞や区切りが省略されすぎていて、誰が誰に何をしたのか一瞬わからない。「○○氏、逮捕へ」「石破首相、退陣へ」の「へ」も、もう逮捕された、退陣したという意味で読んでしまう人がいそうだが、実際はこれからの予定や方針の話だったりする。
「大型ペット キリンも値上げへ」も、ペットとしてキリンを飼っている人向けの値上げに見える。「小女子焼き」は魚の話なのに、知らずに読むと別の意味にしか見えないし、「スク水揚げ」も水揚げされたスクール水着のような語感になる。
「即戦力外野手」「エースがちんこ勝負」「〜がちんこ勝負」も、スポーツ記事としては真面目なのだろうけれど、区切り方を変えると急に下品になる。「男の娘」も、読み方を知らないと男の子の娘なのか何なのかわからない。「濃厚接触」も、感染症の流行前と後では、受け取る印象がすっかり変わった。
「先生きのこる」「この先生きのこるには」は、誤変換なのか、意図的な言葉遊びなのか、初見では判断に迷う。きのこる、という動詞がいつの間にか成立しているのも面白い。
結局、誤解を招く見出しは、誤植というより、新聞やニュースの省略された文体と、日本語の同音異義語や区切りの曖昧さが組み合わさって生まれるものなのだと思う。読んだ瞬間に「えっ」となって、本文を開くと「ああ、そういうことか」となる。その一瞬の落差が楽しい。
ただし、「○○人死傷」みたいに被害の大きさを強調するための表現まで、面白い見出しとして並べるのは少し違う気もする。誤解が笑いになるものと、笑ってはいけないものはある。
というわけで、日本三大を三つに絞るのは無理だった。ノーバン始球式、アフガン航空相撲、暴力二男を三大巨頭としつつ、米国ではしか、米原発、武豊火力発電所、東ソープラント、先生きのこるあたりも候補に入れておきたい。