映画で一般人がちいかわの闇を知ったと嬉しがってる連中、なんなんだろうな。
「ちいかわ初見の人が映画を見て泣いてる!」「かわいいだけだと思ってた一般人が、ちいかわの世界の残酷さに気づいてしまった!」みたいな報告を、ものすごく楽しそうにしている人たち。ちいかわの良さにやっと気づいたんだね〜、みたいな、ちょっと上から目線のやつ。
あれ、作品が好きというより、作品を知らない人に作品の“真髄”を味わわせて、その反応を観測するのが好きなんだと思う。自分が初見のときに感じた驚きや悲鳴を、他人を通してもう一度体験している。ゲーム・オブ・スローンズやまどマギ、メイドインアビスの初見勢の阿鼻叫喚を楽しむのと同じで、いわゆる愉悦部のノリだよね。
そういう悪趣味自体は、まあ嫌いじゃない。積極的に子どもを泣かせているわけでもないし、好きにすればいいと思う。ただ、それを「一般人は何も知らない」「俺たちは本当のちいかわを知っている」みたいな態度で発信しているのが、かなりキツい。語尾に全部「(ニチャア)」がついているように見える。
しかも、本当に映画がちいかわ初体験の人ってそんなにいるのか。原作は無料で読めるし、アニメも普通に放送されている。めざましテレビだけ見ている人や、キャラクターを知っているだけの人が劇場に来ることはあるだろうけど、映画を見て「ちいかわってこんなに怖い作品だったんだ!」となる人が大量にいる、という話まで盛っているようにも感じる。
初日のレイトショーに行った人の客層報告を読むと、痛い感じのファッションの人が多くて迫力があった、という話もあった。そういうのを見て「これぞオタク」「陰キャの本質」などと言いながら、さらに外側から客やファンを評価している自分たちも、結局は同じ穴の狢だと思う。他人をバカにしすぎなんだよ。
そもそも映画自体は、原作の持ち味を劇場版向けに露悪的にした感じで、そこまで面白くなかったという感想も出ている。原作の、かわいさの裏に嫌なものが隠れている感じが好きだった人にとっては、人魚編あたりから露悪趣味が表に出すぎて萎えた、というのもわかる。映画を見てコンテンツの寿命が縮まるのでは、という心配まである。
可愛い見た目に残酷な設定を足して、「本当は怖いちいかわ」として喜ぶ文化は、グリム童話やポケモン都市伝説、ボカロの歌詞の意味を考察していた頃からずっとある。八百比丘尼や昔話のような、自然との共生や人間の怖さを感じる読み方もできる作品だとは思う。
でも、子どもや一般人が知らずに見て驚いた、という報告を「してやったり」と受け取って、さらにそれを外へ発信して楽しむのは、悪趣味である自覚くらい持っていたほうがいい。自殺マニュアルのブームや、無修正のポルノを突きつけるような下卑た快感と、完全に別物だと言い切れるほど上品ではない。
まあ、自分もそういう反応を見るのが嫌いではないから、あまり偉そうなことは言えないんだけど。好きな作品を他人が初めて味わっているのを見てうれしくなる気持ちはわかる。ただ「一般人が闇を知ったぞ!」と騒いでいる人たちを見て、作品よりそっちのほうに闇を感じてしまう。