かんぴょうって餅巾着と昆布巻きでしか食べないよね、と書いたら、ものすごい勢いで「海苔巻きだろ」と突っ込まれた。そうだった。かんぴょう巻きがあった。完全に忘れていたというか、かんぴょう巻きは自分の中で「かんぴょうを食べる料理」ではなく、「寿司屋の端にいる細長い巻き物」くらいの認識だった。
でも、あらためて考えるとかんぴょう巻きはかなりうまい。甘辛く煮たかんぴょうに、海苔と酢飯。店によってはわさびをしっかり効かせてくれて、それがまたいい。甘い、しょっぱい、辛い、海苔の香り、飯の酸味が順番に来る。最後に日本酒か熱いお茶を飲めば、もう十分に締めの一品として成立している。助六寿司を買ったときも、いなりより先にかんぴょう巻きへ手が伸びることがある。
子供の頃は、かんぴょうといえば餅巾着を縛っている紐だった。鍋の中でほどけずに餅を包んでいる、食べられる紐。昆布巻きにも使われていて、結び目のあたりを見つけると少し得をした気分になった。まさかそれ自体を甘く煮て、酢飯と一緒に海苔で巻くとは思わなかった。関東の寿司屋で「海苔巻きください」と言うとかんぴょう巻きが出てくる、という話もあって、地域によって食べ物の前提がずいぶん違うらしい。
太巻きやちらし寿司にも普通に入っている。すし太郎の具にもなっているから、知らないうちに食べている可能性は高い。細く刻まれた甘いものが混ざっていると、全体が少し寿司らしくなる。にんじんや椎茸と一緒に煮物にしたり、味噌汁やお吸い物に入れたり、卵とじにしたりする家もあるそうだ。実家で味噌汁の具に出ていたという人もいて、そう聞くと急に身近な食材に見えてくる。
かんぴょうは夕顔の実を細長く削って乾かしたものらしい。乾燥する前の、巨大な瓜のような姿を見たことがないので、畑で見たらメロンか何かと間違えそうだ。あれを食べ物にしようと思い、皮をむき、長く削り、干して保存する。昔の人の工夫はすごい。切り干し大根の太い版だと思えば、汁物や煮物に使われるのも納得できる。
ただ、下準備が大変だという話も聞いた。水で戻して、塩でもんで、ゆでて、味を含ませる。漂白していない、乾かしすぎていないものを卵とじのお吸い物にするとおいしいらしいが、産地の人からたくさんもらったときでもないと、なかなかそこまでやらない。買ってきたらすぐ食べられる巻き寿司のほうが、現代人には便利だ。
栃木の名産品で、特に壬生あたりが有名だという話も出てきた。機械で夕顔を削るところを見てみたい。白い帯がどんどん伸びていくのは楽しそうだし、干されている光景もきっときれいだろう。かんぴょうをよく知らない人には、食べられる紐という説明がいちばん伝わる気がする。
そういえば、祖母に買い物を頼まれたとき、紙に「カンピーヨ」と書いてあった、という思い出があった。おばあちゃんの作るいなり寿司や海苔巻きはおいしかった、という話もあった。食材そのものより、誰かが作ってくれた料理の記憶に結びついている人が多いのかもしれない。
コメントを読んでいたら、急にかんぴょう巻きが食べたくなってきた。寿司屋で締めに頼む人がいるのもわかる。わさびを多めにして、熱いお茶をすすりながら食べたい。結局、餅巾着と昆布巻きだけではなかった。太巻き、ちらし寿司、味噌汁、煮物、卵とじ、そしてかんぴょう巻き。思っていたより、かんぴょうには食べ方がある。知らないうちに食べていたものを、食べていないと思っていただけだった。