飲み会で、上司に「上っ面しか見せないよね」と言われた。酔っていたので、その場では笑ってごまかしたけど、帰ってからも意味がよく分からない。

仕事の場で、必要なことは話している。雑談にも参加するし、相手の話を聞いて、失礼にならない程度に相づちも打つ。自分の家庭事情や過去の傷、好き嫌い、誰が嫌いかまで披露しないだけだ。そもそも、そこまで話したい相手でもない人に、いきなり内面を見せる必要があるのだろうか。

「もっと本音を出せばいいのに」と言われることもある。でも、いわゆる本音というのは、別に隠し持っている真実の顔ではない。相手や場所に合わせて言葉を選ぶことも含めて、自分の態度だと思っている。飲み会で酔いつぶれたり、悪口を言ったり、下品な失敗談を披露したりすれば、腹を割ったことになる、という感覚もよく分からない。

その上司は、何度も質問を重ねてきた。学生時代は何をしていたのか、家族とは仲がいいのか、恋人はいるのか、会社に不満はないのか。答えにくいものは曖昧に流したけれど、そうすると「ほら、上っ面だ」と言われる。答えたら答えたで、今度は話の材料にされる気がする。どちらにしても、こちらの都合はあまり考えられていない。

本音を知りたいというより、自分に心を開いている可愛い部下を演じてほしいのではないか、とも思う。上司の昔の苦労話を聞いて「すごいですね」と言い、自分の弱みや失敗を少し差し出せば、きっと「分かっている」と評価される。けれど、それは対話というより、相手を気分よくするための接待に近い。

もちろん、仕事に支障があるほど人と関わらないなら、多少の調整は必要だと思う。質問に答えない、話に入らない、いつも事務的でよそよそしい、という意味なら、改善できるところはある。自分でも、興味のない話題になると意識が別のところへ飛んでしまうことがあるし、相手から見れば「壁がある」と感じるのかもしれない。

ただ、「上っ面しか見せない」と直接言うのは、アドバイスというより圧力だ。しかも酒の席で、立場の強い人から言われれば、笑って受け流すしかない。酔えば本音が出る、酒を飲ませれば距離が縮まる、という考え方にもついていけない。酒を飲んでいる人の言葉を、こちらが真剣に受け止める義理もない。

次に言われたら、「どういう意味ですか」と聞いてみようと思う。あるいは、「これが自分の普通です」とだけ返す。相手が求める本音を差し出して、弱みを握られるくらいなら、上っ面と言われても構わない。大人はみんな、ある程度の上っ面の中で人付き合いをしている。そこを全部脱がせようとする人のほうが、少し怖い。