「八街」 ← やち-また じゃなくて や-ちまた だった
八街って、ずっと「やちまた」だと思っていた。いや、読み方としては実際それで合っているのだけど、頭の中では漢字二文字をそのまま「やち・また」と分けていた。ところが、どうやら「や・ちまた」らしい。八番目の開墾地につけられた「八」と、「ちまた」を表す「街」。そう聞くと、急に地名の見え方が変わる。
千葉県北西部の開墾地には、初富、二和、三咲、豊四季、五香、六実、七栄、八街、九美上、十倉、十余一、十余二、十余三と、順番を感じさせる名前が並んでいる。初富から始まって、八番目が八街。十余二などは知っていたけれど、八街もその列に入っていたとは知らなかった。八だけは市の名前として残ったので、シリーズの一員だという印象が薄かったのかもしれない。
「ちまた」は、巷の「ちまた」。道が分かれる場所とか、人の集まる場所という意味で、街を「また」と読むのではないらしい。「みち」の古い形に関係するという説明もあって、読み方を知るほど、単なる当て字ではなく、昔の言葉の層が重なっている感じがする。とはいえ、初見で「や・ちまた」と読める人は少ないだろう。私も完全に「やち・また」だと思っていた。
しかも八街市内の町名には「い」「ろ」「は」「に」……と、いろは順の地名がある。数字で開拓地の順番を示したあと、住所はかな文字で整理されている。八街い、八街ろ、八街は、と並ぶと、地名なのか暗号なのか分からなくなってくる。市の案内にルビが振ってあるのも納得だ。地元の人には普通でも、外から来た人にはかなり難しい。
八街といえば落花生の産地でもある。炒ったものだけでなく、ゆで落花生も名物らしく、好みは分かれるそうだが、好きな人にはたまらないという。大粒のおおまさりをゆでて食べる、という話を聞いて、地名の由来から食べ物の話へ自然に流れていくのも千葉らしい。
それにしても、読み方の勘違いを知った瞬間に「やっちまったなあ」と言いたくなる。たぶん同じことを思った人は多い。ドン・キホーテを「ドンキ・ホーテ」だと思っていたとき以来の衝撃、という感想にも笑った。地名は、知っているつもりで読んでいると、思わぬところで区切りを間違える。八街は、まさにそれを教えてくれる名前だった。