食べ物って、買うときはだいたい「食べたいか」「いくらか」しか考えてないんだけど、買ったあと家まで運ぶ段階で急に難易度が上がるやつがある。
まず思いついたのは、ぴよりん。あれはもう食べ物というより、崩さずに運ぶゲームだと思う。箱を水平に保ち、揺らさず、急がず、できれば座れる場所を確保する。買うまでに並び、買ったあとも緊張しながら持って帰ることになる。出張のたびに買ってきてと言われる人は大変そうだ。
同じく形状を保つのが難しいものでは、ホールケーキ、ピザ、寿司、刺身、スーパーのパック寿司、シュークリーム、パン、ミスドの平たい箱あたり。少しでも袋が傾くと、寿司はちらし寿司になり、刺身は片側に寄り、シュークリームは一番上に置かなければ潰れる。ピザは他の荷物と一緒にすると、斜めにしないで持つのがほとんど不可能になる。平たい箱は、車で来ているとき以外は買うのをためらう。
汁があるものも危険だ。豆腐、煮物、タレの焼き鳥、いなり寿司、カットスイカやカットパイナップル、ドリップの始まった生肉。容器がちょっと弱いだけで、袋の中が大惨事になる。豆腐は潰れると水が出るし、紙コップ系の飲み物は口を上にして運ぶしかないので、片手が塞がるうえに漏れる。コンビニのチキンの油がカバンに染みたときは、食べ物を運んでいるというより事故現場を持ち歩いている気分だった。
温度もある。夏のサーティワンをコーンで買って外で食べようとしたら、すぐ溶けて手がアイスまみれになった。チョコも油断すると帰宅前に柔らかくなる。逆に熱いものでは、茹でとうもろこしを何本も持つと、長い、重い、熱いの三拍子がそろう。炭酸を水筒に詰め替えて自転車で運ぶのは、そもそも何をしているんだという感じだが、振動でえらい目に遭うらしい。
長いものも困る。ネギ、セロリ、バゲット、ごぼう、大根、自然薯。エコバッグからはみ出しているネギは買い物帰りの風物詩みたいなものだけど、できればはみ出させたくないので、大きいジュートバッグを使っている。大根は葉っぱまで立派だとさらにかさばるし、白菜は長いというより全体に大きい。ごぼうは半分に切れたものを買うか、家で使う長さを考えたら店を出る前に折ってもいいのではないかと思う。
重いものでは、米、スイカ、白菜、業務スーパーで大量に買ったもの。米は買う頻度も高いのに、毎回ちゃんと重い。スイカは「大きい」以前に水のかたまりなので、徒歩で持って帰るとかなりの修行になる。調味料のストックが切れて、料理酒、酢、みりん、醤油などをまとめて買う日も憂鬱だ。
匂い部門は、551や蓬莱の豚まん、ドリアン。豚まんはおいしいし、家まで我慢できず食べてしまうこともあるが、電車や街中で袋を持っていると、周囲に「あいつか」と思われていそうで落ち着かない。ドリアンは棘もあるし、空港で問題になることもあるし、家まで持ち帰る前から難易度が高い。
そして、持って帰るのが大変というより、持って帰る前に食べてしまうものもある。ケンタッキー、ファミチキ、肉まん、門前の団子。これは運搬失敗ではなく、目的地に着く前に消滅するタイプ。
結局、買い物袋の詰め方がすべてなのかもしれない。重いものを下、潰れるものを上、汁の出るものは別袋、長いものは最初から専用バッグ。わかってはいるのだが、店を出たあとに袋の中身が少しでも傾くと、帰宅までずっと両手で水平を保つゲームが始まる。持って帰るだけなのに、食べ物によってはかなりの技術が必要だ。