今年の暑さ、ほんとうに異常だと思う。外を10分歩いただけで空調の効いた場所に逃げ込みたくなるのに、炎天下で何時間も働いている人たちがいる。土木作業員、工事現場の警備員、配送員、郵便や宅配の人、道路や駐車場の誘導員、祭りやイベントの設営をしている人たち。アスファルトの上や、熱を持ったトラックの荷台のそばで働いているのを見ると、こちらが申し訳なくなるくらいだ。
この前、Amazonの配送員が愛想が悪かった、挨拶を返さなかった、という投稿が話題になっていた。投稿した人はそのことを愚痴るだけでなく、サポートにも連絡したらしい。もちろん荷物の誤配や破損、遅配について文句を言うのは分かる。でも、届けるという仕事をちゃんと終えている人に、挨拶が返ってこなかった、笑顔がなかったという理由で怒り、会社にクレームを入れるのは、さすがに違うんじゃないかと思う。
愛想よくすることは仕事の技術だ、という意見もある。確かに、客商売ならそういう面はあるだろう。でも、愛想や笑顔まで当然のサービスとして要求していいのか。配達員は一日に何十件、何百件と回っていて、暑さで体力も判断力も削られている。こちらが声をかけたときに返事をする余裕すらない日があってもおかしくない。
挨拶をして返ってこなかったら寂しい、という気持ちは分かる。ただ、その寂しさを相手への怒りに変えて、わざわざSNSに書いたり、仕事を失うかもしれないクレームにしたりする必要はないと思う。自分はプラスの気持ちで挨拶したのだから、返事がなくても自分の中ではゼロに戻るだけでいい。相手をマイナスにしてどうするんだ、と思う。
そもそも、今の配達員に求められているものは多すぎる。指定時間に来い、再配達するな、でも在宅しているときは手渡ししろ、荷物はきれいなまま、感じよく笑顔で、という具合だ。安い送料で家の前まで運んでもらっているのに、そこから先の「感じのよさ」まで無料で要求する。スマホで注文して、届くまでの人間の労働は見えないことにしている。
外で働く人を、どこかで賤しい仕事だと思っている空気もあると思う。エアコンの効いた部屋から、現場の人にだけ完璧なマナーや愛想を要求する。そういうお客様は神様的な態度が、サービスを提供する人の待遇や生産性を下げて、エッセンシャルワーカーを報われにくくしているんじゃないか。
もちろん、危険な運転や誤配、荷物の破損まで我慢しろと言っているわけではない。仕事として最低限必要なことへの指摘と、相手の機嫌や笑顔を自分の権利のように求めることは別だ。愛想が悪い人を見て嫌な気分になる自由はある。でも、その感情を相手にぶつけたり、会社を通して罰を与えたりする前に、少しだけ相手の事情を想像してほしい。
自分も昔、屋外で汚れる肉体仕事をしていた時期がある。きつかったけれど、当時は今ほど露骨に客からぞんざいに扱われる感じはなかった気がする。今なら、暑い中で交通整理をしている人や、トラックから荷物を下ろしている人を見たら、まず倒れないでくれと思う。余裕があれば「暑いですね」「ありがとうございます」と言う。返事がなくても、それで終わりにする。
冷たい飲み物を差し入れたいと思っても、知らない人から渡されるのが嫌な人もいるし、置き場所もない。だからせめて、余計な要求をしないこと、置き配やロッカーを使えるときは使うこと、受け取ったらありがとうと言うことくらいはしたい。空調服や酷暑手当が当たり前になって、無理な時間帯に働かなくてもいい仕組みになれば一番いい。
「どんなに辛くても愛想よくしろ」という社会ではなく、辛いときに愛想を返せなくても仕事を続けられる社会の方がいい。こちらも余裕がないから怒ってしまうのだろうけど、だからこそ、外で働いている人にもう少しやさしくしてもいいと思う。