プリキュアに選ばれるには、まず何をすればいいのか。朝から真剣に考えていた。

オーディションを受ける。声優になる。東映の株を買う。いや、いっそ大株主になって株主総会で「次のプリキュアに私を」と議案を出す。実家が太い必要があるという説もあるし、親に店を開くか国を建ててもらう手もある。国民栄誉賞を取ってからお願いすれば、さすがに話くらいは聞いてもらえるかもしれない。

身体も鍛えたほうがいいらしい。ベンチプレスとデッドリフトを二百キロ。自分の何倍もあるものを持ち上げるのが伝統芸なら、まず冷蔵庫あたりから始めるべきだろう。だが、力がなくても頑張る眼鏡の委員長がいるなら、筋肉だけが条件ではないはずだ。草むしり検定に受かることのほうが、平和を守る心に近い気もする。

プリキュアは敵を殴り倒すだけではない。戦いになる前に交渉し、取引をして、誰も傷つかないようにするプリキュアがいてもいい。怪物が現れたとき、恐怖に負けず、誰かを守ろうと一歩踏み出せるか。それが共通点なのだろう。平和について一瞬も考えたことがない私は、書類選考で落ちる。

そもそも「選ばれる」のを待っている時点で受動的すぎる。自分からなるのだ。強く願えばキュアマスダになれる。誰かがプリキュアになれるなら、誰もがなれる。そういう話だった気がする。全人類がプリキュアになったこともあるらしいので、年齢や性別だけで門前払いというわけでもなさそうだ。犬や猫や宇宙人まで候補になる時代なら、壮年男性にも、理屈の上では可能性がある。

ただし、私は美少女になりたいのか、悪の組織の幹部になりたいのか、自分でもよく分からない。朝起きたら美少女になっていて、変身後の振る舞いができず、敵側で戸惑っている未来のほうが想像しやすい。マリちゃん枠を目指したら闇落ちしてラスボスになるかもしれない。

トラックに飛び込むとか、怪物に会うため街を徘徊するとか、危険な近道は却下。転生も来世も、今いる世界を雑に捨てる理由にはならない。コスプレなら節度を守って今すぐできるし、まずはそれでいい。

結局、プリキュアになる方法は、選ばれるのを待たず、誰かを守るために自分で動くことなのだと思う。毎朝番組を見る幼女たちに憧れられるような強い心と夢見る力。私にあるのは、変身したいという欲望と、加齢臭くらいだ。

それでも、いつか呼ばれたら返事をしたい。 「俺が、俺たちが、プリキュアだ!」と。