相談所で妻と結婚した。

こう書くと、いかにも条件を並べて合理的に相手を選んだみたいだけど、実際はそんなに割り切れていなかった。結婚相談所では、真剣交際に入ってから数か月程度で結論を出すような空気がある。もちろん人それぞれだし、早い人は早いのだろう。でも人生を賭ける決断なのだから、少なくとも一年くらいかけて相手を知りたいと思っていた。結局、相談所の制度を使い切ることもなく、妻とは別の形で知り合い、妻のほうからかなり強く来てくれて、その勢いに押されるように結婚した。

妻は自分より収入が高い。差は数十万円程度で、生活に困るほどではない。それでも、結婚してからずっとそのことが頭に引っかかっている。

妻が露骨に「あなたは私より下」と言ったわけではない。家事をしないとか、金を出さないとか、そういう具体的な不満があるわけでもない。むしろ普通にしているだけなのだと思う。なのに、何気ない言葉や表情を、自分への上から目線だと受け取ってしまう。仕事の話をされるだけで、収入の差を見られている気がする。何かを決めるとき妻の意見が通ると、稼いでいるほうが偉いと思われているような気になる。

たぶん妻より年収が高かったら、同じ言葉を言われても気にしなかった。自分でもそう思う。年収以外に自信を持てるものがないのか、と言われたら返す言葉がない。妻をスペックや容姿だけで選んだつもりはないが、婚活の場ではどうしても条件を見てしまったし、妻のほうが高いという事実を、結婚後も自分の中で何度も比べている。

以前、年収差を理由に断ったこともある。そのときは、対等な関係を作るには同じくらいの収入が必要だと思っていた。今考えると、相手を見ていたようで、自分のプライドを守っていただけだったのかもしれない。

妻は僕を責めていない。責めていないからこそ、勝手に劣等感を抱えている自分が惨めになる。家計に収入を入れてくれていることには感謝しているし、二人分の収入で暮らせるのはありがたい。それなのに、素直に「あざっす」と言えず、心の中で勝手に傷つき、勝手に妻を冷たい人にしてしまう。

結婚して良かったのだろうか。妻と結婚しなかったら、もっと自分に合う人がいたのだろうか。それとも、誰と結婚しても同じように、相手の優れたところを自分への攻撃だと思って苦しくなるのだろうか。

離婚すれば楽になるのかもしれない。でも妻が悪いわけではないのに、僕の劣等感のために別れるのも違う気がする。転職して収入を上げれば解決するのかとも考える。ただ、それで妻を追い越したとしても、今度は別のことで比べ始めるだけかもしれない。

自分が何に傷ついているのか、何を妻に求めているのか、まだうまく言葉にできない。妻にこの話をしたら、呆れられる気がする。それでも、まずは自分の中で整理してから、きちんと話すしかないのだと思う。

こんなことを誰にも言えず、チラシの裏のフジツボみたいに書いている。どうせまた、そんな自分だから駄目なのだとか、妻のほうが気の毒だとか、好きに言われるのだろう。叩かれるのも含めて、自分が選んだ結婚について考えるために書いた。

妻より稼げないことではなく、稼げない自分を自分で見下していることが問題なのだろう。そこから逃げたままでは、結婚して良かったかどうかなんて、いつまで経っても分からない。