年間100本以上、何年も映画館に通っている。多い年はそれ以上で、同じ作品を字幕と吹替、通常上映とIMAXで見直すこともある。だからといって映画のことを何でも知っているわけではないし、映画をたくさん見ていること自体が偉いとも思っていない。ただ、映画の話をするときに最低限ここは共有しておいてほしい、という20本を選んだ。

これは「人生で一番好きな映画20選」ではない。好き嫌いを超えて、見たことがあると会話の土台になる作品、見終わったあとに少しだけ世界の見え方が変わる作品を選んだ。ググって出てくるランキングをそのまま写したつもりはない。定番には定番になるだけの理由があるし、何度も名前が挙がる映画を避けるために変な作品を入れるのも違うと思った。

1. 『ショーシャンクの空に』 2. 『時計じかけのオレンジ』 3. 『ファイト・クラブ』 4. 『フォレスト・ガンプ/一期一会』 5. 『ゴッドファーザー』 6. 『生きる』 7. 『2001年宇宙の旅』 8. 『インターステラー』 9. 『セッション』 10. 『ソーシャル・ネットワーク』 11. 『グランド・ブダペスト・ホテル』 12. 『マッドマックス 怒りのデス・ロード』 13. 『ブレードランナー 2049』 14. 『メッセージ』 15. 『パラサイト 半地下の家族』 16. 『シン・エヴァンゲリオン劇場版』 17. 『ダークナイト』 18. 『マッドマックス2』 19. 『インセプション』 20. 『裏窓』

最初から『ショーシャンクの空に』で、いきなり無難だと思われるかもしれない。でも、刑務所の中で希望を失わずにいる話として、初めて見たときに受けた衝撃は大きかった。何度もテレビで放送され、何度も語られてきた作品でも、初見の人がちゃんと面白いと思える強さはある。

『時計じかけのオレンジ』と『ファイト・クラブ』は、暴力や反社会性を格好いいと言いたいわけではない。自分が自由だと思っているものが、実は周囲の規範や消費の仕組みによって形作られているかもしれない。その嫌な感覚を、極端な映像で突きつけてくる映画だ。しんどい人がいるのも当然だと思う。

『フォレスト・ガンプ』は苦手だという人もいるだろう。自分も全面的に好きなわけではないが、個人の人生を大きな歴史の流れに置き、本人だけがその意味を理解していないように見せる構成は見事だった。『ゴッドファーザー』は家族と権力の話。善人が悪人になるというより、家族を守るという言葉の中に権力欲が滑り込んでくる。

黒澤明の『生きる』は、役所の職員が残り少ない時間の中で自分の仕事を見つめ直す話。派手な展開はないのに、見終わったあと、明日から何をするかを考えさせられる。『2001年宇宙の旅』は、分からない部分を分からないまま受け止める映画だと思っている。すべてを説明してくれないことが欠点ではなく、映像と音楽そのものに身を預けるための余白になっている。

『インターステラー』は科学考証だけを楽しむ映画ではなく、離れてしまった親子がもう一度つながろうとする映画。『メッセージ』も、未知の存在との意思疎通を通して、時間や選択の意味を考えさせる。原作小説の美しさとは別の方法で、映画にしかできない見せ方をしていると思う。

『セッション』は努力と狂気の境目が分からなくなる映画だ。師弟愛として見る人も、ただの虐待として見る人もいる。自分は、成功のためなら傷つけられることまで受け入れてしまう状況が怖かった。『ソーシャル・ネットワーク』は創業者の伝記というより、友情や承認欲求がシステムに変換されていく話として見ている。

『グランド・ブダペスト・ホテル』は色彩と構図が美しいだけではなく、失われていく時代への弔辞のようなところがある。『怒りのデス・ロード』は純粋なアクション映画として、映画館で見たときの身体的な体験がすごかった。説明を削っても、人物の目的と世界のルールが伝わる。

『ブレードランナー 2049』は前作を知らなくても見られるが、前作を見てからの方が、自分が何者なのかという問いが深くなる。映像、音、沈黙、ライアン・ゴズリングの表情を含めて好きだ。駄作だという人の意見も分かる。長いし、眠くなる場面もある。それでも自分には残った。

『パラサイト』は家の構造だけで階級を描く。『シン・エヴァ』は単品の完成度だけでなく、長く続いたシリーズをどう終わらせるかという作品だと思う。『ダークナイト』はヒーローの格好よさより、正しさを守るためにどこまで自分を汚せるかの話として見ている。

シリーズものなら『マトリックス』、冒険なら『インディ・ジョーンズ』、笑いたいなら『少林サッカー』、邦画なら『七人の侍』や『東京物語』も入れたかった。ただ20本では足りない。アニメを一本だけ入れるなら、別の作品になっていたと思う。

この20本を見ていないから映画の話をする資格がない、という意味ではない。知らない映画を教えてもらうのも映画の話だし、同じ作品を見ても感想が違うのが面白い。自分が観た本数を肩書きにして、相手を試したいわけではない。とはいえ、これらをまったく見ていない人とは、映画の話の入口が少し違う気がする。

「これが入っていない」と思う作品があれば、ぜひ教えてほしい。『マトリックス』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『ロッキー』『レオン』『ガタカ』『パルプ・フィクション』『ダンサー・イン・ザ・ダーク』『RRR』あたりは最後まで迷った。映画館で見てよかった作品、何度も見返した作品、誰かに勧めたい作品があれば知りたい。年間何本見るかより、一本の映画が自分の中に何を残したかの方が、たぶん大事なので。