文章を投稿できるだけの、いいねもコメントもないサービスを作った。

文章を書いて公開する場所というと、どうしても「誰かに読まれる」ことが前提になる。読まれた数、いいねの数、コメント、フォロワー、ランキング。書いている途中から、これはどう見られるだろうか、と考えてしまう。noteなんかは特に、最初から読者や収益化を意識した場所という感じがある。

もちろん、それが悪いという話ではない。反応があるのはうれしいし、誰かに読んでもらうために書くこともある。ただ、反応がほしい気持ちと、反応が怖い気持ちが同時にある。見られたいのに見られたくない。われながら面倒くさい。

そこで、文章を公開できるけれど、サービス側にはソーシャルな機能がほとんどない場所を作ってみた。いいねもコメントもない。フォローもない。数字を競うものもない。書いたものがインターネット上に置かれて、URLを知っている人や、たまたま見つけた人が読む。それだけ。

手元のテキストファイルやメモと何が違うのか、と言われると、正直かなり近い。自分だけのメモではなく、公開されているというところだけが違う。誰かに読まれる可能性は残しておきたい。でも、読まれた結果として通知が来たり、評価がついたり、返事を求められたりはしたくない。そういう気分のための場所だと思っている。

昔の個人日記や、さるさる日記みたいなものを少し思い出す人もいるかもしれない。あるいは「しずかなインターネット」に似ていると言われた。自分でも、そういう系譜にあるサービスだと思う。違うものを作ったつもりではあるけれど、考えていることが近い場所はすでにいくつもある。

既存のサービスを使えばいいじゃないか、というのもその通り。はてなブログでも設定次第で似たことはできるし、WordPressでもいい。iPhoneにはメモもジャーナルもある。チラシの裏でもいい。匿名掲示板でもいい。

それでも作ったのは、必要だからというより、作ってみたかったからだ。作り手の動機としてはそれで十分だと思っている。サービスを作るとき、最初から集客や収益や成長を考え始めると、作りたいものからどんどん離れていく。まずは作って、公開して、実際に誰かが使うところまでやってみたかった。

昔は、こういうものを個人で運営するだけでもサーバ代や環境構築の費用が気になった。今は無料枠の大きいサービスがあるし、使い方によっては月に数ドル程度で動かせる。Cloudflareなどのおかげで、以前なら大げさだった構成も、個人の「作ってみたい」で始められるようになった。もちろん、無料だから何も考えなくていいわけではないけれど、始めるハードルはかなり下がっている。

開発には最近のAIも使った。たぶん画面やコードを見れば、そういう雰囲気は伝わると思う。自分ひとりで全部を手で書いた、という話ではない。ただ、何を作るかを決めることや、動かしてみて直すこと、使える形にまとめることは必要だった。思ったよりちゃんとしたものになったので、自分でも少し驚いている。

登録にはメールアドレスが必要になる。ここは自分でも重いと思っている。文章を書くためだけにメールアドレスと日記を個人に預けるのは、今の時代だと抵抗がある人も多いだろう。登録画面を見て、そのまま戻る人がいても不思議ではない。

匿名で書けるようにする、Cookieだけで同一性を持たせる、登録なしで投稿できるようにする、という案も考えた。ただ、文章投稿サイトは、荒らしや脅迫、犯罪予告のようなものを書かれたときに、結局誰かが対応しなければならない。サーバ代が安くても、運用の手間は無料にならない。最低限の登録を求めているのは、そのあたりの現実的な理由もある。

とはいえ、登録を必須にすることで、思想と使い勝手がぶつかっているのもわかっている。見られることを意識しない場所を作りたいのに、使い始めるまでに個人情報を求める。そこは今後考えたいところだ。

ダークモードには対応している。夜に文章を書く人も多そうなので、これはあってよかったと思う。逆に、今後どんどん機能を増やしていくつもりはない。カテゴリや同盟のようなものを作れば面白いかもしれないけれど、つながりを削ぎ落としたいサービスに機能を足していくと、別のものになってしまう。

ページビューくらいは表示してもいいのでは、という意見もあった。アクセス数や滞在時間がわかれば、読まれている実感は得られる。でも、それを入れた瞬間に、少ない数字を気にし始める人もいる。数字がないこと自体を、このサービスの特徴にしたい気持ちがある。

流行るかどうかはたぶんわからない。こういうサービスは、過去にもいろいろ出てきたけれど、大きく当たったものは多くないと思う。そもそも流行ってほしいのかどうかも、よくわからない。たくさんの人に使われると、静かな場所ではなくなる。

それでも、静かにネットへ文字を投げたいときに使う人が一人でもいればいい。アカウントを作って、タイトルに「テスト」と書いて、本文にも「テスト」と書いて投稿するだけでもいい。そういう使われ方をする場所があってもいいと思う。

とりあえず作って公開した。あとは、必要だと思う人がいたら使ってください。反応はなくても、投稿はできます。