夏の相場を振り返って、今年アツかった日本株を個人的な印象で10銘柄選んでみた。あくまで年初から見た値動きと、その周辺で起きていた出来事を並べただけなので、買い推奨ではない。むしろ、ここに出てくる銘柄を今から買うと、ちょうど天井でつかむ可能性も普通にある。

まず印象に残ったのはキオクシア。高校生がバイト代で単元未満株を買った、という話が話題になったあたりから、妙に身近な存在になった。そこから最高値まで駆け上がり、ほどなくして半値近くまで落ちる。上がっているときは夢があり、下がると金融の授業で使えそうな教材になる。キオクシアは、楽しい上にお金まで増えるとは限らないということを、短期間で見せてくれた。

次はさくらインターネット。国産クラウドや生成AIの期待で上がったり、情報漏洩の話で急落したり、とにかく値動きが忙しい。保有している人は毎日がイベント、持っていない人には波瀾万丈の観察対象だったと思う。今からでも楽しそう、というコメントを見たが、楽しさと含み益は別物なのでそこは注意したい。

イオンも大きく動いた。株式分割や優待への人気が重なって、個人株主が殺到した反動で落ち着いただけ、という見方もある。業績が低迷した、と単純に書くと違うだろという指摘はその通りで、値上げのせいで沈んだという話ではない。映画優待を楽しみに持っている株主もいるし、優待込みで買う株としては相変わらず強い。ただ、人気化した株価が永遠に続くわけではない。

任天堂は一時かなり下げたものの、そこから戻してきた。新作や次世代機への期待で、株価がニュースに反応しやすい銘柄だと思う。ゲーム会社はファンの熱量がそのまま株価の物語になるので、個別株というよりファンクラブに近い、という感覚もわかる。バンダイナムコを長期保有していて、値動きをあまり感じないという人もいたが、持ち続けるとそういう見方になるのかもしれない。

ヤマハ発動機は趣味枠で持っていた人が倍近くになって笑っていた。好きで買ったものが上がるのは理想的だが、買った理由が趣味だと、売り時はさらにわからなくなる。パナソニック、オムロン、TOTO、味の素、京セラ、リクルート、イビデンなど、他にも上昇した有名企業は多い。特にリクルートは大きく上げたという話があり、見落としていた。

ブックオフHDも年初来でかなり上がった銘柄として挙げられていた。身近な店の会社が上がっていると、相場の話が急に生活に近くなる。トライアルもほぼ倍になったということで、店舗を利用している人なら気づいていたのかもしれない。井村屋の優待は100株の次が500株で、300株くらいにしてほしいという優待族の気持ちもよくわかる。

海運株も強かった。郵船、商船三井は世界情勢に直結するぶん、上がるときは派手だが、何が起きるかわからない。金も同じで、投資しやすい一方、値動きは激しい。今年アツかったものとして入れてもよかった。銀行では、ふくおかFGや琉球銀行、おきなわFGの含み益がすごいという話もあった。地域銀行は身近さがあるし、金利の影響も受けるので、見ていると面白い。

一方で、下がった銘柄も忘れてはいけない。海帆、東洋エンジ、データセクション、ユニチカ、メタプラネットなど、かなり厳しい下落をしたものもある。フジクラについては、保守的な見通しを出したら暴落し、慌てて修正したのが印象最悪だったという声があった。去年一昨年のほうがアツかった、という見方も含め、上昇銘柄だけを並べると相場の怖さが消えてしまう。

指数を見ると、オルカンやS&P500を持っていれば「なんかお金増えてる」となりやすい。個別株を十個組み合わせて、それを安定して上回るのは難しい。外国株の円建て評価は円安の影響でかさ上げされるため、将来円高になったときが怖いという意見もある。それでも、よくわからないまま個別株を買うより、低コストのインデックスを積み立てるほうが心穏やかな人は多いだろう。

優待株を積み上げて、トヨタ、ソフトバンク、イオンを持ち、半分はオルカンという運用も現実的だと思う。はてな株を長く持ち、記念優待を見て売った直後に大きな事件が起きて、結果的に神回避になった人もいた。はてなは心中すると言う株主までいる。新サービスを大ヒットさせるしかない、フォーラムはどうなった、という話も含めて、会社への愛着が株を持つ理由になるのは個別株らしい。

文具ではコクヨ、ウイングアーク、三菱鉛筆が優待をめぐって競争しているらしい。自社商品をもらえる株は、値上がり益とは別の楽しみがある。バッファローのデジタルギフトや商品選択も気になる。サンリオを忘れるなという声もあった。こうして見ると、株価の数字だけでなく、優待、商品、店、サービスへの愛着が個別株の面白さなのだと思う。

ただ、この記事の数字には指数の基準や時点がずれているものもありそうだった。SOXやKOSPIの年初来について、マイナスなのか大幅プラスなのか、見る場所によって話が変わる。円建てか現地通貨建てかでも印象は違う。銘柄は面白いのに、書いていることがいちいちズレているという指摘もあったので、次回は基準日と計算方法を最初に書きたい。

今回は上がった株を中心にしたが、次は優待株だけ、あるいは下落した株だけでやってみたい。買わない株の動きは気楽に見られるし、定期的にやれば相場の空気も記録できる。個別株は難しい。でも、好きな会社を少しずつ買い、上がれば喜び、下がれば理由を調べる。そのくらいの距離感で眺めるのが、いちばん長続きするのかもしれない。