# 移民映画10選
移民や難民、あるいは「よそから来た人」をめぐる映画を10本。ここでいう移民映画は、入国や定住の制度を正面から扱う作品だけではなく、異なる文化や民族が同じ社会で暮らすときに生まれる軋轢や、世代をまたいだアイデンティティの揺れを描いたものまで含めている。
移民を受け入れればすべてがうまくいく、という単純な話でもないし、排除すれば問題が消えるわけでもない。映画の中でも、善良な被害者と悪い加害者がきれいに分かれることは少ない。だからこそ、いろいろな立場から見られる作品を選んだ。
## 1. グラン・トリノ
退役軍人で、長年暮らした町から取り残されつつある老人と、隣に住むモン族の姉弟の交流を描く。最初は露骨な偏見と嫌悪から始まるが、ウォルトは次第に隣人の若者を守ろうとするようになる。
去りゆく白人の老人と、未来を担うアジア系の若者という図式はかなり明確だ。とはいえ、単純な「多文化共生万歳」ではなく、誰を自分の後継者として認めるのか、そして自分の命をどこで使うのかという話でもある。
## 2. トゥモロー・ワールド
子どもが生まれなくなった近未来のイギリスで、主人公は妊娠した移民の女性を安全な場所へ送り届けることになる。荒廃した社会で、国境や排外主義がどう人間を分断するのかが描かれる。
中年の白人男性が、若い黒人女性と彼女の子どもを助ける物語として見ると、グラン・トリノとの近さも感じる。未来を持たない世界で、未来そのものを運ぶのが「外国人」だという皮肉が印象的だ。
## 3. 第9地区
地球に避難してきたエイリアンを、難民や移民のメタファーとして描いたSF。隔離地区に押し込められた彼らを管理する側の人間が、ある出来事をきっかけに自分も差別される存在へと変わっていく。
エイリアンを宇宙から来た移民と考えると、かなりストレートな移民映画だと思う。人間は彼らを「異物」として扱うが、主人公自身の立場が変わることで、その視線が少しずつ揺らいでいく。
## 4. ベッカムに恋して
サッカー選手を夢見るインド系移民の少女が、家族やコミュニティの価値観とぶつかりながら夢を追う青春映画。文化の違いは衝突の原因になる一方で、主人公を支える背景でもある。
移民をめぐる作品というと重い難民映画を思い浮かべがちだが、これはスポーツと恋愛と家族の話として楽しく見られる。異文化の共存を、説教ではなく日常の笑いとして描いているのがいい。
## 5. パリ20区、僕たちのクラス
パリの中学校を舞台に、多様な出自を持つ生徒たちと教師の一年を描く。教室では言葉や宗教、家族の背景が衝突し、学校という制度だけでは解決できない問題も次々に現れる。
移民との共生がフランス社会にとって長年のテーマであり、同時に課題でもあることがよくわかる作品。きれいごとにまとめず、会話のすれ違いそのものを映画にしている。
## 6. ディーパンの闘い
内戦下のスリランカからフランスへ逃れたタミル人の男女が、偽装家族として新しい生活を始める。難民として保護されても、暴力や不安から完全に自由になれるわけではない。
「逃げれば終わり」ではなく、逃げた先でも生き延びるための闘いが続く。家族とは血縁なのか、それとも一緒に危機をくぐり抜けた者たちの関係なのか、という問いも残る。
## 7. エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
中華系移民の家族が営むコインランドリーを中心に、母と娘、夫婦のすれ違いが途方もない多元宇宙の物語へ展開していく。下品で荒唐無稽なカンフーSFだが、根底にあるのは移民二世の娘と、異国で生きてきた母親の距離だ。
アメリカで移民が担ってきた労働や、家族の中に残る文化の記憶も見える。どの世界を選んでも完全な正解はなく、それでも目の前の相手に優しくするしかない、という結論が好きだ。
## 8. マイ・ビューティフル・ランドレット
ロンドンのパキスタン系移民一家と、その周囲の人々を描く。人種だけでなく、階級、性的指向、家族のしがらみまでが絡み合い、軽妙な場面の裏側にはかなり厳しい現実がある。
異文化理解というより、同じコミュニティの中にも世代や階級による違いがあることを見せる映画。若いダニエル・デイ=ルイスの存在感もすごい。
## 9. マイ・ビッグ・ファット・ウェディング
ギリシャ系移民一家の娘がアメリカ人男性と恋に落ち、結婚式を迎えるまでの騒動。家族が濃すぎて、主人公の恋愛がなかなか本人たちだけの問題にならない。
ギリシャ式の結婚や親族の距離感に笑わされる一方、異文化の違いを越えても家族の愛情は残る、という着地が温かい。移民映画の入口としてかなり見やすい一本。
## 10. スーパーマン
スーパーマンはもともと、異星から来た「外国人」がアメリカ社会で生きる物語でもある。新しい映画でも、彼が異星人であることを理由に排斥しようとする視線が描かれ、ヒーローの正体と移民の比喩が重なる。
宇宙から来た存在を受け入れられるのか、社会に貢献するなら受け入れてもいいのか、それとも出自にかかわらず権利を認めるべきなのか。スーパーヒーロー映画らしい大きな話だが、現実の移民政策にもつながる問いだと思う。
このほかにも、『憎しみ』『闇の列車、光の旅』『希望のかなた』『おじいちゃんの里帰り』『マイスモールランド』など、移民や難民を扱った映画は本当にたくさんある。『ゴッドファーザー』や『ウエスト・サイド物語』のように、移民そのものを主題にしていなくても、移民社会としてのアメリカを描いた作品も多い。
移民映画を10本に絞るのは無理があるので、ほかにもおすすめがあれば教えてほしい。