夏になると、どこからともなく聞こえてくる「鳴き声」を、だいたい鳴き始める順に並べてみた。生き物に限らず、夏を知らせる人や音楽や現象も含む。地域差、年差、気温差がかなりあるので、厳密な暦ではなく、あくまで個人的な観測である。

4月〜5月 ニイニイゼミ 「チーーー」という、遠くで小さな機械が動いているような声。姿はあまり見ないのに、鳴き声だけは意外と聞こえている。南のほうではクマゼミも早い。タカノリことT.M.Revolutionは、夏を刺激するのでこの辺から鳴き始めてもよさそうだ。ダイスケはもう少し後か。

5月〜6月 ジョーヒサイシ、サザン、チューブ 夏の映画、海、サービスエリア、青い空などを連れてくる音。ジョーヒサイシは初夏から初秋まで息が長い。サザンとチューブはニイニイゼミのような、夏の入口からずっといる種類だと思う。最近は昔ほど大音量ではない気もする。

6月〜7月 クマゼミ 「シャアシャアシャア」という、セミの声というより警報に近い音。数が一番多いと思っている地域もあるし、一匹でもアブラゼミを上回る音量なので、実際より多く感じる。沖縄ならオオシマゼミやディアマンテスも加わる。

7月 アブラゼミ、ミンミンゼミ、ナオタロウ 「ジジジジ」「ミーンミンミンミン」。いよいよ本格的な夏。ナオタロウは今年で素数の23年目、ヨウスイは来年で素数の37年目なので、素数ゼミと呼んでいる。ヨウスイは「夏が過ぎ風あざみ」と歌いながら現れ、秋頃には腐る。

7月下旬〜8月 ヒグラシ、フジファブリック、センチメンタルバス ヒグラシは「カナカナカナ」。夕方の涼しさを知らせる、いちばん風情のある声だと思う。ただし暑すぎる年は、クマゼミやアブラゼミが夜まで鳴いて、ヒグラシが聞こえない。ヒグラシは季語では秋っぽいが、涼しい朝夕なら夏の早い時期にも鳴く。

8月 ツクツクボウシ、タツロウ、マライア 「ツクツクボーシ、ツクツクボーシ」。これが鳴くと夏も終わり、という昔ながらの合図。最近は暑さのせいか、クマゼミやミンミンゼミと同時期に鳴くこともある。タツロウとマライアは、夏の終わりから別の季節にかけて、まだしばらく鳴いている。

8月下旬 宿題が終わっていない小学生、そしてそのママ 「宿題終わってないの!? あれほど早くやっておきなさいって言ったでしょーーー!」。8月30日、31日になると、子どもと親の声が近所から聞こえてくる。同人作家や計画性のない子どもたちも、この時期に鳴く。

夏祭りの帰りにはミンミンゼミを捕まえて観察する。複眼がキュート。顔ならヒグラシが一番かわいいが、なかなか捕まらない。なお、マンションの廊下でひっくり返っているセミ、いわゆるセミファイナルには注意。近づくと突然飛び、こちらへ襲ってくる。

このほか、バイクに乗ったヤンキー、珍走団、予定納税で泣く経営者、8月31日に泣く親子、そして夏の終わりに「なーつのおーわーりー」と歌う人も鳴く。北海道では雪がなくなると珍走団が湧き、冬になると消えるらしい。虫みたいだ。

温暖化で発生時期も鳴く時間帯も変わっている。夜に普通のセミが鳴き、朝夕のヒグラシが聞こえなくなった。ドラマや映画にも、できればセミ考証を付けてほしい。旧暦八月にミンミンゼミ、午後のクマゼミなど、気になると内容が頭に入らない。

来年は鳴き声も添え、スマホでも崩れない形で、クマゼミとチューブを追加する。セミは一年中どれかが鳴いている。夏が終わっても、静かになったとは限らない。