ある団体に問い合わせをして、その返答が来た。
こちらとしては要望を伝えたつもりだったんだけど、返ってきたのは組織としての正式な回答というより、担当者個人の見解に近い文章だった。なので、「これは団体の公式見解なのか」「そうでないなら、問い合わせ窓口に何を返しているんだ」と思って、そのメールのやり取りを一部伏せてネットに公開した。
そしたら、問い合わせの返答をネットに上げるのは私信の公開だから駄目だ、という話になった。
えっ、問い合わせへの返答って私信なの?
個人同士のメールやLINEなら、勝手に公開するのはまずいという感覚はある。自分もDMのスクリーンショットを晒すようなことはしない。相手との信頼関係を前提にした通信だし、公開を想定していない文章だからだ。
でも、団体の問い合わせ窓口に送った問い合わせに、団体名義で返ってきた回答まで「私信」と言われると、かなり違和感がある。団体に対して要望を送り、団体の窓口から返答を受けたなら、それは少なくとも組織の業務の一部ではないのか。担当者が新人かベテランかは関係なく、窓口から送られた以上、団体としての回答だと思っていた。
もちろん、だからといって何でも公開していいとは思っていない。担当者の氏名やメールアドレス、個人情報まで晒すのは論外だし、前後を切り取って相手を悪者にするのもよくない。公開するなら、必要な部分だけを引用して、個人が特定されないようにするくらいの配慮は必要だろう。
ただ、今回のように、こちらが問い合わせた内容に対して、公式見解なのか担当者の感想なのか分からない返答をしてきた場合、その対応について事実を共有することまで禁じられるのだろうか。公式サイトに載っている発表ではないから信用できない、というのも分かる。でも、公式見解を出してくれないからこそ、実際にどう返答されたのかを示す意味があるのではないか。
「公開質問状として出せ」「回答義務はない」という意見もあった。それもそうなのかもしれない。こちらは普通の問い合わせのつもりだったけれど、組織としての見解を求めるなら、最初から公開質問状という形式にすべきだったのだろう。問い合わせ窓口が必ずしも広報やサポート窓口ではないなら、なおさらだ。
一方で、問い合わせを受けた側が都合の悪い回答を全部「私信」と呼んで公開禁止にできるなら、透明性がなくなりすぎる。回答の末尾に「転載禁止」と書いてある企業もあるし、規約で禁止しているサービスもある。その場合は従うべきだと思う。でも、何も書かれていない場合まで、ネットの常識として絶対に駄目だと言われると、どこまでが私信なのか分からない。
著作権の問題があるという指摘もあった。文章を書いた人に著作権がある以上、手紙やメールを無断で公開すれば侵害になる場合があるらしい。私信の公開そのものを一律に禁じる法律があるわけではないとしても、著作権やプライバシー、名誉毀損など別の問題が発生する可能性はある。そこを「公開する自由がある」で済ませるのは雑だった。
それに、公開した結果として、その団体や担当者に大量の苦情や中傷が殺到するなら、やっていることは実質的に個人攻撃だ。自分では事実を共有しただけのつもりでも、読む側は祭りとして消費する。相手が弱い立場にいると分かったうえで、素性を隠して問い合わせ、その返答を材料にするなら、なおさら慎重であるべきだった。
逆に、対応する側にも「問い合わせに返した文章が絶対に外へ出ない」と思い込まないでほしいとは思う。あらゆる回答を何重にも承認して、結局は当たり障りのないゼロ回答しか返さないのが組織として正しいのか。個人の感想を公式回答のように送られたら、受け取った側が混乱するのも当然だ。
結局、法律上ただちに違法かどうかと、公開していいかどうかは別の話なのだろう。違法でなければ何をしてもいいわけではないし、逆に「私信だから駄目」と言われたからといって、組織の対応が適切だったことになるわけでもない。
今回の件では、先に相手に公開してよいか確認するか、個別の返答を晒すのではなく、やり取りの概要だけを書くべきだった。自分としては団体の対応に問題があることを伝えたかっただけなのに、結果的には担当者個人を表に引きずり出す形になってしまった。そこは反省している。
問い合わせへの返答は、公式見解であっても公開情報とは限らない。公開したいなら、まず「これは公開していい文章なのか」を考える。そんな当たり前のことを、ネットに慣れたつもりで忘れていたのかもしれない。