久しぶりに『パプリカ』を映画館で観た。4Kリマスター上映だったので、せっかくだし大きな画面と音で浴びてみようと思ったのだが、これはやっぱり劇場で観るための映画だな、と最初の数分で思った。映像の情報量も、音楽の押し寄せ方も、家でちょっと再生するのとは別物だった。

冒頭のタイトルからもう好きだ。あの音が鳴って、現実と夢の境目がほどけていく。パレードの場面はもちろんすごいのだけど、個人的にはそこへ向かうまでの不安定さや、何でもない風景が急に別の意味を持ちはじめる感じにいちばん惹かれる。初見では筋を追うので精いっぱいだったのに、何度か観ると、むしろ筋を追わないほうが楽しめるようになった。

パプリカは、人生のどこかで突然わかるようになる映画なのかもしれない。以前はただ奇妙で派手な作品だと思っていた場面が、ある時ふと、夢の中ではこういうことが起こるよな、と腑に落ちる。起きているつもりなのに別の夢へ滑っていたり、自分の記憶ではないものに感情を動かされたりする、あの感覚だ。

音楽も忘れられない。エンディングの「白虎野の娘」が流れると、見終わったというより、まだどこか別の場所へ連れていかれる気がする。劇場の大音響で聴くと、映像が終わっても映画の続きが頭の中で動き続ける。バーチャルグラスで観るのも意外と向いていると思うが、できれば一度は映画館で体験してほしい。

筒井康隆の原作にも、映画とは違う面白さがある。後半のはちゃめちゃさも好きだし、映画の大胆な改変も好きなので、どちらが上という話ではない。原作準拠のドラマなども少し見てみたい気はするけれど、この映画の夢と現実が混線する速度を、別の形で再現するのは大変そうだ。

今敏は作品を発表して評価されると、次はそれを裏切るように違う方向へ進んでいった印象がある。『パーフェクトブルー』や『千年女優』も大好きだが、同じ人が作ったとは思えないくらい毎回姿を変える。その先の作品をもっと観たかった。『夢見る機械』がいつか復活しないものかと、今でも時々思う。

観るたびに、いいものを観たなあ、と思う。そして同時に、もう次の新作には出会えないのだという寂しさも残る。だから定期的にリバイバル上映されるのはありがたい。パプリカは、夢の話でありながら、映画館で観た記憶そのものを夢みたいにしてしまう作品だ。